「ヒックとドラゴン」感想|ドリームワークスが生み出した隠れた傑作

「ヒックとドラゴン」感想|ドリームワークスが生み出した隠れた傑作

ドリームワークス・アニメーションと言えば、「シュレック」「マダガスカル」などの名作を生みだしたアメリカのアニメーション製作会社です。
その中で、日本ではあまり取り上げられませんでしたが、「ヒックとドラゴン」が非常に多くの人から高い評価を受けています。
続編「ヒックとドラゴン2」も世界的にヒットし、ゴールデングローブ賞アニメ映画賞やアニー賞を受賞しています。
しかし、この「ヒックとドラゴン2」…なぜか日本で劇場公開しないという異例の事態が起こりました。(このとき、熱心なファンによる署名活動も行われたそうですが、それも報われず無念…)

そして、なんとこの度「ヒックとドラゴン3」が20191220日に日本公開することが決定しました!
これは何としても劇場で観なくては!
そんな隠れた傑作の第1弾「ヒックとドラゴン」についてレビューを書いていきます。


1.あらすじ
2.感想(ネタバレなし)
・圧倒的な映像美と大迫力の音楽
・トゥースがとにかく愛らしい!他のキャラクターやドラゴンも魅力的
・ヒックが成し遂げようとしていることの凄さ
3.感想(ネタバレあり)
・テーマは「共生」「理解」
・綺麗だけでは終わらない映画
・父ストイックとの絆
・1点だけあえて言うならば
4.まとめ


1.あらすじ

・2010年公開
・監督:ディーン・デュボア、クリス・サンダース
・イギリスの児童文学作家クレシッダ・コーウェルによる同名児童文学が原作。

バイキング一族が住んでいるバーク島は、度々島に襲来しに来るドラゴンと長い間戦ってきた。
そのため、バーク島では「ドラゴンを殺すことが全て」と考えられてきた。
鍛冶屋で働いていた少年ヒックは、この島で立派なバイキングになることをずっと夢見ていたが、村の長である父ストイックと違い体つきも細く問題を起こすことも多いので、ドラゴン退治の際には邪魔者扱いされていた。
そんな時、ヒックは自分で発明した武器で、最も危険とされ生態も知られていない「ナイトフューリー」を捕らえることに成功した。
ナイトフューリーを殺して村に持ち帰れば村でのヒックの評判は上がり、人生が変わることになる。
しかし、ヒックはナイトフューリーを殺すことができなかった。
ヒックはそのドラゴンを「トゥース(英語ではtoothless)」と名付け、少しずつ距離を近付けていった。
自分が傷付けたことでトゥースは上手く飛べなくなっていたため、ヒックは持ち前の発明の才能で義尾びれを作り出し、一緒に飛行練習をするまでになった。
次第に、人間はドラゴンに対して誤解していたと気付き、この村でのドラゴンとの争いを何とか止めることはできないだろうかと考えるようになる。

2.感想(ネタバレなし)

92点。
ヒックとトゥースが友情を育んでいく過程は本当に愛おしくて、何度でも見返したくなる映画です。

圧倒的な映像美と大迫力の音楽

この映画は、島の風景、キャラクターの表情、ドラゴンの炎、トゥースとの飛行シーンなど映像の細かいところまで美しくてずっと見ていられます。
DVDの特典映像の中に、アニメーターが作品を作る過程を紹介するコンテンツが入っています。
トゥースの動き、炎の描き分けだけでも、信じられないくらい膨大な量の研究をしています。
あぁ、この人たちは科学者なのかな?と思うくらい緻密に考えられていて、アニメーター(クリエイター)の執念に脱帽しました…本当にリスペクトします。
そして、こんな素晴らしい映像とともに奏でられる音楽も素晴らしいです!
これから冒険が始まる予感がする壮大な音楽が映像とマッチしています。
音楽は、イギリスの作曲家ジョン・パウエル氏が担当しています。
ちなみに「ヒックとドラゴン2」も引き続き彼が担当していますが、こちらも変わらず素晴らしいです。

トゥースがとにかく愛らしい!他のキャラクターやドラゴンも魅力的

バーク島では、ナイトフューリーは生態が分からず危険なドラゴンとされてきましたが、トゥースはその前評判をいい意味で裏切ります。
ヒックと友情を育んでいくうちに、心優しいお茶目な性格ということが分かってきます。
そんなトゥースの行動・表情がとにかく愛らしいのです。
エサの半分をヒックに分け与えたり、ヒックがお絵描きしていると木の棒で真似してきたり、光を追いかけたり、きょとんとした目をしたり…
もう可愛い猫にしか見えません(笑)
そんな愛らしい姿に観客はすぐに虜になってしまいます。
また、他のドラゴンたちもカラフルで性格もそれぞれ個性的で愛らしいです。
ヒックの仲間たちがそのドラゴンたちに乗って協力する姿も必見です。

ヒックが成し遂げようとしていることの凄さ

ヒックはまだ子どもです。
そんな彼が、バーク島の人たちが抱くドラゴンについての誤解を解き、争いを止めようとするのは想像以上に大変です。
ヒックも小さい頃から「ドラゴンは危ない」「ドラゴンは殺せ」と刷り込まれていたはずです。
それでも、トゥースと出会うことによって自分の目で見るものを信じ、次第にこれまで教えられてきたことに疑問を持つようになります。
これまでの価値観を見直すなんて大人でもなかなか出来ません。
今まで漠然と「敵」と見ていたものが、「命あるもの」なんだと理解したのです。
そして、そこから自分の命の危険があると分かりつつトゥースと交流を深めたヒックの勇気に拍手を送りたいです。
そして、その勇気に賛同するアスティ含め仲間たちが、ヒックに協力してくれる場面はこちらも嬉しくなります。
ヒックは彼らが居なかったら途中で心が折れていたかもしれません。

3.感想(ネタバレあり)

テーマは「共生」「理解」

この映画のテーマは他者との「共生」「理解」です。
ヒックも「僕たちはドラゴンのことを勘違いしていたのかもしれない」と自分が無知であったことを知り、知る努力の重要性を実感していきます。
ヒックがドラゴンを殺す最後の儀式で、トゥースが助けに来てくれたのに島の人たちが一斉に襲い掛かった場面は見ていて本当に辛かったです。
ヒックのトゥースを襲わないでという叫び声も届かず、誤解したままトゥースに攻撃をするのです。
せっかく今までヒックという人間と信頼を築いてきたのに、トゥースが「やっぱり人間は信じちゃダメだ」と思い直しちゃうのではないかと心の中でヒックと一緒に叫び、涙が出てきました。
おそらく世の中のほとんどの争いは、お互いについて無知・無理解であることが原因であることが多いと思います。
何気ない一瞬の勘違い・すれ違いは深い溝を生んでしまいます。
そのため、「人間に攻撃されてもヒックをまだ信じてくれてありがとう」とトゥースに言いたくなります。

トゥースが捕まってしまった後、父ストイックとヒックは口論になります。
(ストイック)「ドラゴンは仲間を何百と殺した!」
(ヒック)「でも僕らもドラゴンを何千と殺した!」
これを聞いてはっとしました。
そう、人間もドラゴンの命を奪っているのです。
正当化された殺し…本当にいいの?と考え直すこともなくなるくらい、たくさんの時間が経ってしまったのですね。
お互い信頼し合うって本当に難しいです。
ましてや相手に裏切られたら命を落とす可能性があるのです。
だから、ヒックとトゥースはとんでもないことをやり遂げたのです。

最終的に、大きな戦いをドラゴンと乗り越えた後、バーク島の人たちはドラゴンとの「共生」を選びました。
長年戦ってきた大人たちがそれを受け入れるのは容易ではなかったと想像できます。
しかし、受け入れたのには戦いでドラゴンに助けられたという理由もありますが、きっと目の前にヒックとトゥースという「成功モデル」があったからではないかと思っています。
「ドラゴンと戦う必要がない。理解し合える」と言葉だけの説得ではきっと心は動かされません。
自分の目で「成功モデル」を目にしたから踏み切れたのです。
そこに、父ストイックという村の長がみんなをその気にさせたのですから、みんなからの信頼が厚いことが分かります。

綺麗だけでは終わらない映画

子ども向けアニメーション映画だと「色々困難はあったけど乗り越えて幸せになりました」という展開が多いけれど、この映画ではアニメーションらしからぬ「犠牲を伴った幸せ」という異色の結末を迎えました。
ドラゴンとの共生を叶えた一方、ヒックは最後の戦いで左足を失い義足となります。
まさか、主人公が左足を失うなんて予想外でした。
ヒックは自分の左足を見た時、一瞬複雑な顔をしますが、その後何だかすぐに受け入れた顔をします。
トゥースも尾びれの左側を失っているので、何だか象徴的ですね。
この要素でヒックとトゥースの繋がり・絆がより一層強くなることも予想されます。

この映画は義手・義足をつけているキャラクターも出てくるから、手足を失ったときに必要以上に悲観していない点も好きです。
バイキングという環境は、手足を失うことは障害ではなく、例えば視力が悪くなったときに眼鏡をかけるように、「補う」ことを自然に考えられるところなのかなと感じました。

ドリームワークスは綺麗だけの映画だけじゃなくて、こういった一見残酷にも見える演出を入れてくることがあります。
アニメーションとしては少し重いかなと思う反面、物語を深くする要素でもあると思います。

父ストイックとの絆

ストイックとヒックの絆もついつい泣いてしまいます。
ちなみに、ストイックの声をしているのは、「300<スリーハンドレッド>」「エンド・オブ・ホワイトハウス」などに出演していたジェラルド・バトラーです。
低くてよく響くいい声ですね。
ストイックは村の長であり、ドラゴン退治でも先頭を切って戦ってきました。
そんな彼は、息子は将来ドラゴンを殺して戦っていけるか不安に思っていました。
しかし次第に、ドラゴンを殺すどころか、ドラゴンと戦う必要がないと説得してくる息子に「お前はバイキングでもない。息子でもない。」と言い放ってしまいます。
冒頭からヒックは父からの承認を切望していたので、このシーンは心が痛みます。
しかし、ドラゴンと共に戦った後、「バイキングにはこれが必要だったんだ」と息子を全肯定するようになります。
ヒック、良かったね…!嬉し涙が流れてしまいます。
ストイックはとても頑固ではありますが、自分なりに息子を守ろうとしていたことは分かりますね。素敵なお父さんです。

1点だけあえて言うならば

ここまで大絶賛の私ですが、1点だけあえて言うならば最後の締めくくりにはほんの少しだけ不満を感じています。
バーク島の紹介が冒頭にも行われますが、最後の締めくくりにもバーク島の紹介が再度行われます。
冒頭と比較してバーク島がどのように変化したか分かる演出になっています。
そこでバーク島で唯一の自慢できるものとして、「ペット」=ドラゴンと紹介しています。
個人的には、ヒックは既にトゥースのことを頻繁に「相棒(bud)」と呼んでいたし、「ペット」という表現ではなく「相棒」「パートナー」「家族」でもいいのかなと思ってしまいました。
もちろんペットを飼っている人はその動物を家族として接していると思いますが、ドラゴンとの特殊な関係性を言い表すのに「ペット」は少し違うような気がしました。
でも、バーク島と人たちにとっては、これから関係を築いていくから「ペット」と表現したのか…真意は分かりません。
でも、ヒックとトゥースの関係性を見てきたから、私はついつい現実世界より特別な名前を付けたくなっちゃうのでした。

4.まとめ

今回、「ヒックとドラゴン」について書きましたが、続編「ヒックとドラゴン2」も負けず劣らず素敵な作品です。
アニメーションだからと言ってナメてかかってはいけません。何度も泣かされます。
なかなか認知されていないこの傑作を、一人でも多くの人に観てもらえたら嬉しいです。
最新作が公開される前に、「ヒックとドラゴン」「ヒックとドラゴン2」2作品合わせて是非楽しんでください!