「硫黄島からの手紙」感想|何のために戦うのか、国とは何だろう…

「硫黄島からの手紙」感想|何のために戦うのか、国とは何だろう…

昨日に引き続き硫黄島の戦いを描いた映画を紹介します。
「硫黄島プロジェクト」2部作の日本側視点で描かれた映画「硫黄島からの手紙」です。


1.あらすじ
2.感想(ネタバレなし)
・(ほとんど)全編日本語で展開されるアメリカ映画
・栗林忠道陸軍中将(渡辺謙)
・タイトルに「手紙」と入っているけど…
3.感想(ネタバレあり)
・西郷昇陸軍一等兵(二宮和也)
・自決シーン
・西竹一陸軍中佐(伊原剛志)とアメリカ兵捕虜
4.まとめ


1.あらすじ

・2006年公開
・監督:クリント・イーストウッド
・出演:渡辺謙、二宮和也、伊原剛志、加瀬亮、中村獅童 他

太平洋戦争の戦況が悪化している中、小笠原方面最高指揮官である栗林忠道陸軍中将が硫黄島に赴任することになった。
硫黄島は本土防衛の最後の砦と言われている。
栗林中将はアメリカに駐在していた経験から、今の作戦のままでは多くの兵士を失うと感じ、水際防衛作戦を中止し洞窟を掘らせて内地持久戦に持ち込むことを命じる。
更には、部下への理不尽な体罰は兵力を失うとして止めさせ、これまでと異なった形で指揮をとる栗林中将に対して隊員たちは驚きの目を向ける。
そして、1945年2月ついにアメリカ軍が硫黄島に上陸し戦いが始まった。

2.感想(ネタバレなし)

86点。
戦争の悲惨さ、やるせなさが作品を通してひしひしと伝わってくるものの、これはたくさんの人が経験するべき映画だと感じました。

(ほとんど)全編日本語で展開されるアメリカ映画

この映画は、(ほとんど)全編日本語で展開されていますがアメリカ映画という不思議な映画です。
「父親たちの星条旗」と同様、クリント・イーストウッドが監督を務めました。
彼は日本語が話せませんが、日本人の私たちが見ても違和感のない日本人を描くことに成功しており非常に驚きました。
洋画で描かれる日本人は、しばしば私たちが「えっ?」と思うような要素(SAMURAI!みたいな)を取り入れてしまうことがありますが、この映画ではそういったものがなく、アメリカ映画だということを忘れてしまいます。
自分だったら理解できない言語の映画監督なんてできないなぁ…。

また、「父親たちの星条旗」のように、どちらかの国を贔屓にするような描き方はせず、あくまでも客観的な事実を淡々と描いています。
しかし、「父親たちの星条旗」よりも兵士一人ひとりの性格やバックグラウンドが分かるような描写が多いので、その後に訪れる「死」に対してより一層感情移入ができるという演出も施されており、彼の監督としての魅力を感じました。

画面は全編通してモノトーンのような、セピア色のような色合いで表現されています。
色んな時間軸を行き来していた「父親たちの星条旗」とは違い、ほとんど硫黄島での出来事を時系列で描いているので、自分もずっと戦場にいるような緊張感を持って観ていました。
そして、怪我や遺体を表現する特殊メイク(?)のレベルが高く、ショッキングな描写は多いように感じました。

栗林忠道陸軍中将(渡辺謙)

本土防衛の最後の砦と言われた硫黄島の死守に全力を尽くした栗林中将を渡辺謙さんが演じました。
渡辺謙さんが出演されている作品はいくつか観ていますが、今までで一番魅力的な演技をこの作品で見せてくれたと思います。圧倒的にカッコいい…!
圧倒的な兵力を誇るアメリカ軍は5日程度で決着をつけるつもりでしたが、中林中将は約40日間硫黄島を守りました。
敵国を知っているからこその柔軟な発想、合理的な行動、そしてそれらを信じさせる重厚なオーラ…静かなのに熱のある感じ…見事に演じ切ってくれたと思います。

タイトルに「手紙」と入っているけど…

構成としては、2006年に戦跡の調査隊が硫黄島の地中から数百通もの手紙を見つけ、届くことのなかった家族に宛てた手紙にはどんな想いが綴られていたのだろうか…と硫黄島の戦いを振り返るというものです。
作中でも、栗林中将や西郷が家族宛てに手紙を書いて色んな想いを載せていましたが、思ったほど手紙にフォーカスされていない印象でした。
もちろん手紙を通して、家族を思いやる心、家族に本音を言いたい心、母親からの手紙を支えにしている心を表現していました。
しかし、映画を観た後は手紙以外の要素のほうが心に重く残っていたので、むしろ違うタイトルでも良かったのかな、とも思いました。

3.感想(ネタバレあり)

西郷昇陸軍一等兵(二宮和也)

二宮和也さんが演じる西郷は実在した兵士ではありません。
「当時の若者の代弁者」のような存在です。
戦争当時の兵士はみんな、自分の意思よりも国のために誇りを持って戦った、そんなイメージを私は持っていました。
でも、西郷はまるで現代の若者のような口調で、司令官に疑問を感じる、作戦に疑問を感じる、自宅に帰りたい、と愚痴をこぼします。
そんな現代の若者とあまり変わらない西郷は「戦争映画」の雰囲気に溶け込んでおらず映画冒頭では少し違和感を持ってしまうのですが、もしかしたらそれが現場のリアルだったのかもしれないと次第に思うようになりました。

そんな中で、私は二宮和也さんの「見てはいけない、見られない」と本能的に視線を逸らす演技が素晴らしいと感じました。
・召集令状を受け取るとき
・隊員がひどい姿で亡くなっていたとき
・栗林中将が自決するとき など…
自分を保つためにできる精一杯の行動というのが伝わりました。

自決シーン

西郷のいた部隊もほぼ壊滅状態となり、栗林中将は玉砕するな、他の部隊と合流しろと言っていたのに、現場の指揮官の勝手な判断で兵士に手榴弾で自爆することを指示します。
このシーンが本当に見ていられないぐらい辛かったです。
口では「天皇陛下、万歳!」と言っているのに、心の中では家族のことを思い死にたくないと思いながら死んでいくのです。
西郷の友人・野崎が泣きながら自爆するシーンは、私も泣いてしまいました。
野崎を演じた松崎悠希さんは主にアメリカで活躍されている方のようです。
またどこかで演技をお目にかかれたらいいなと思います。

西竹一陸軍中佐(伊原剛志)とアメリカ兵捕虜

この作品において、西中佐とアメリカ兵捕虜Samの交流のシーンは象徴的に感じました。
西中佐はロサンゼルスオリンピック馬術障害飛越競技にて金メダルを獲得しており、英語も流暢に話すことができます。
そのため、Samを手当てした上で、故郷、友人、オリンピックの話などをします。
国は関係なく、個人 対 個人であれば心が通わせられるという“希望”のシーンにも感じられました。
Samは手当てしたものの翌日亡くなってしまいますが、彼は母親からの手紙を大事に持っていました。
母親が息子を思いやる気持ちに溢れた内容で、その他隊員も戸惑ってしまいます。
それまでアメリカ兵は腰抜け・マヌケなどと教えられてきたのに、彼らも自分たちと同じ人間なのだと気付かされた瞬間でした。

「父親たちの星条旗」でも描かれていましたが、兵士は敵のことは何も知らずに戦っていて、それはとても悲しいことだと思いました。
栗林中将と西中佐は敵国を知っているからこそ戦いに対する姿勢が他の兵士と違い、そして残念ながらそれは少数派のため組織の中で浮いてしまいます。
「知ろうとする」、それだけで様々な悲しい状況は改善されるのに…戦争に対するモヤモヤが湧き上がってきますね。
「国」って何だろう…誰のためのものだろう…

4.まとめ

普段戦争映画をあまり観ていないので、「父親たちの星条旗」「硫黄島からの手紙」を鑑賞して予想通り体力はものすごく使い数日引きずるような感覚でした。
でも、この疲労は現代人の私たちには必要なものだと感じました。

毎年この時期になると戦争に関するテレビ番組などが放送されるけれど、自分の意思がないとそういった情報に触れることがありません。
恥ずかしながら私も大人になって随分経ちましたが、そんな8月15日をたくさん過ごしてしまいました。
「平和」を願うと口で言うのは簡単だけれども、人間は容易に過ちを犯す可能性があります。
そのため、「平和じゃない」世界もきちんと知って自分の頭で考えることが大切だと感じました。

まだまだ考えが及ばないところも多くあるかと思いますが、この2本の作品をきっかけに、今後は戦争について知ろうとすることを続けたいなと思っています。
そういう人が一人でも増えて平和な世界に一歩でも近付きますように。