「リトル・ミス・サンシャイン」感想|負け犬とは何か、もう一度考えてみよう。前に進む勇気がもらえるロードムービー

「リトル・ミス・サンシャイン」感想|負け犬とは何か、もう一度考えてみよう。前に進む勇気がもらえるロードムービー

この頃天気がどんよりしていて気が滅入りますが、そんな気分を減らしてくれる元気の出る映画を紹介したいと思います。

「リトル・ミス・サンシャイン」
10年以上前の作品ですが、未だ色褪せず何度でも観たくなる大好きな映画です。
自分は負け犬なんじゃないか、負け犬になりたくない、どうにか這い上がりたい…
そんなモヤモヤを抱えている人に観てほしいです。

この作品は、第79回アカデミー賞で脚本賞(マイケル・アーント)と助演男優賞(アラン・アーキン)を獲得しました。
マイケル・アーントはあの名作「トイ・ストーリー3」の脚本も手掛けたそうです!
それを聞くだけでこの映画の期待度も上がってしまいますよね。


1.あらすじ
2.感想(ネタバレなし)
・家族が個性的すぎる
・オリーヴを応援したくなる
・マイクロバスを押す姿がじわじわ来る
3.感想(ネタバレあり)
・負け犬とは何か。全てはおじいちゃんの言葉の中に。
・ドウェーンのツンデレ
・何だかんだきっかけはリチャード
・最後の名シーンは笑いながら泣いていた
4.まとめ


1.あらすじ

・2006年公開
・監督:ジョナサン・デイトン、ヴァレリー・ファリス(夫婦です)
・脚本:マイケル・アーント
・出演:グレッグ・キニア、スティーヴ・カレル、トニ・コレット、
ポール・ダノ、アビゲイル・ブレスリン、アラン・アーキン

舞台はニューメキシコ州アルバカーキ。
フーヴァー家はリチャード(夫)、シェリル(妻)、ドウェーン(兄)、オリーヴ(妹)、エドウィン(祖父)の家族5人で暮らしていた。
しかし、シェリルの兄・フランクがあることが原因で自殺未遂を図ったため、彼もフーヴァー家に居候することになった。

そんなある日、オリーヴが出場していた美人コンテストで予選を通過したことが知らされる。
予選通過者はカリフォルニア州で開催される本選「リトル・ミス・サンシャイン」に出場できるのだ。
オリーヴは本選に出場できると大喜びをするが、旅費やその他色んな問題があり、結果古いマイクロバスを使って家族全員でカリフォルニア州まで向かうこととなった。
その道中でのドタバタとそれぞれの心情の変化を描いたロードムービー。

2.感想(ネタバレなし)

90点。
まとまりのないフーヴァー家をコメディーっぽく描いていますが、ふとしたところで「家族」を感じられるシーンもたくさんあり、そのバランスがとても心地よいです。

家族が個性的すぎる

なんと言ってもフーヴァー家がそれぞれ個性的です。

◆リチャード(夫)
この世は2種類の人間(「勝ち馬」か「負け犬」)に分かれていると考えている。
負け犬にならないための独自の自己啓発プログラム(9段階プログラム)でビジネスを成功させようと奮闘している。
家族にもいつも負け犬にならないためのノウハウを話すが、当人が上手く行っていないという皮肉な状況で家族からなかなか耳を傾けてもらえない。

◆シェリル(妻)
離婚をして、元夫との子ドウェーンを連れてリチャードと再婚する。
家族の面倒をこなす一方で、兄の自殺未遂のため一家に受け入れる等、フーヴァー家をまとめるしっかり者。

◆ドウェーン(兄)
テストパイロットになるための学校に入るという夢を実現するため「沈黙の誓い」を立てている15年の少年。
もう9ヶ月間全く喋っておらず何かを伝えるときは筆談をする。
ニーチェに憧れていて、周りの人間はみんな嫌いだと言っている。

◆オリーヴ(妹)
「リトル・ミス・サンシャイン」での優勝を夢見る7歳の女の子。
とにかく真っ直ぐで純粋。
おじいちゃんとダンスの練習をするのが大好き。
少しぽっちゃりしているが、ミスコンでは絶対勝つと気合が入っている。

◆エドウィン(祖父)
第二次世界大戦の退役軍人。普段から口が悪く、大の女好き。
一度は老人ホームに入っていたものの、ヘロイン使用が問題となりフーヴァー家に戻ってきた。
孫娘オリーヴのことは、一緒にダンスの練習をする等とても可愛がっている。

◆フランク(叔父)
フランス作家プルーストを研究している学者。ゲイ。
失恋をした上に、恋敵が高尚な賞を受賞したため、自殺未遂を図る。
フーヴァー家に居候するが、医者から一人部屋は止められておりドウェーンと相部屋で過ごすことになる。

カリフォルニア州に着くまでに、家族それぞれに苦難が降ってきます。
それを苦しみ、乗り越え、強くなっていくフーヴァー家を観ていると、だんだん愛おしく思えてくる方が多いのではないでしょうか。

オリーヴを応援したくなる

「リトル・ミス・サンシャイン」優勝を目指すオリーヴ。
この作品のキーパーソンとも言えるでしょう。
とにかく可愛いんですよ。
ぽっちゃりして丸々としたお腹も、優勝したときの反応を練習する姿も、
本選に進む電話を受けたときの反応も、アイスを食べるか悩む姿も、
おじいちゃんとダンスの練習をする姿も…
演技とは思えない自然体の姿で魅力たっぷりです。

更なる魅力は好きなことは好きと強く言えるところです。
大人だったら「自信ないから諦めようかな」と思うことも、
オリーヴはとにかく好きだから諦めません。
そんなオリーヴの姿は、フーヴァー家の心を少しずつ変えていく要素になります。
フーヴァー家はそれぞれの形でオリーヴを愛しているのが作品の中でも分かるので、
観ているこっちも心がほんわかします。

マイクロバスを押す姿がじわじわ来る

カリフォルニア州にマイクロバスで向かうのですが、序盤でクラッチが故障してしまいます。
古いマイクロバスのため部品交換もできず、一家はバスを後ろから押して、勢いがついたらみんなで飛び乗るということを旅の間ずっと続けていきます。

最初はこのシーンがシュールで笑えてくるのですが、
イライラしても、喧嘩しても、悲しいことがあっても、
何が何でも家族みんなでコンテストに向かうんだと一致団結する姿を観ると
次第に心にあたたかいものが流れてくる感覚が出てきます。

3.感想(ネタバレあり)

負け犬とは何か。全てはおじいちゃんの言葉の中に。

この作品で度々出てくる「負け犬」という言葉はこの映画のテーマです。
登場人物のほとんどは劣等感を持っていて負け犬にならないようにと悩んでいます。

そんな「負け犬とは何か」という問いに対して、
おじいちゃんが答えを出してくれています。

コンテスト前日にオリーヴが一度だけおじいちゃんに弱音を吐きます。
「負け犬にはなりたくないの」と涙を流します。
ずっとお父さんから負け犬にならないように言われてきたから、
負けるとお父さんに嫌われるんじゃないかと不安になったのですね。
しかし、おじいちゃんはオリーヴにこんな言葉をかけます。

「負け犬っていうのは、負けるのが怖くて挑戦しない奴らのことだ」

もう、本当にこの言葉に全てが集約されていると思います。
こんなに挑戦して頑張っているオリーヴのどこが負け犬なの?
全視聴者がおじいちゃんの言葉に大きく首を縦に振ります。
この言葉はオリーヴの支えとなり、コンテストでも挑戦することを諦めず、
あの最後の名シーンを生んだのです。

更には、自己啓発プログラムの出版に失敗したリチャードに対しても、
おじいちゃんは責めることはせずこんな言葉をかけます。

「チャンスに挑戦したお前を誇りに思う」

リチャードはこの言葉に救われていました。
自分の頑張りを見てくれている人がいると分かるだけでこんなにも心が落ち着くのですね。

ヘロイン使用しているし、ハレンチなことばっかり言うし、
しまいには道中で突然死しちゃうようなおじいちゃんだけど、
こんなかっこいい言葉を残すだなんてズルい、ズルすぎる。
オリーヴのダンスしている姿見せてあげたかったなぁ…。

ドウェーンのツンデレ

個人的に、兄ドウェーンのツンデレ加減が好きです。
フランクに友だちはいないのか聞かれると「I Hate Everyone」なんて伝えていますが、ちょっとしたところで優しさを見せてくれます。

オリーヴがファミレスで結局アイスを食べてしまいリチャードが「これで太ってしまうね」と言いかけたときにストローの袋をリチャードに飛ばして制止したり、
おじいちゃんが亡くなったときにオリーヴに「ママにハグしてあげて」と伝えたり、
道中で色弱が判明しパイロットになれないと分かると車を降りて発狂しますがオリーヴがそっと傍に来ると心を切り替えバスに戻ってみんなに謝ったり、
コンテスト後に家族みんながオリーヴを褒める時にもちゃんと「You are incredible」と伝えたり…

設定ではドウェーンとオリーヴは異父兄弟になると思うのですが、ちゃんとオリーヴを大切に思っている感じがすごく好きです。

何だかんだきっかけはリチャード

自己啓発プログラムのビジネスも上手くいかない、家族も話を聞いてくれない等ここまでいいところなしのリチャードですが、この映画では何だかんだリチャードの決断が非常に重要な要素となります。

一つは、おじいちゃんが死んだときに州をまたいで遺体を運ぶのに手続きに時間がかかりコンテストに間に合わないと分かると、遺体を病院からこっそり持ち出すと決断したこと。
もう一つは、最後の名シーンのとき。(詳細はもう少しあとに)

自分のお父さんがハチャメチャな人だから、自分は「勝ち馬」になろう、ちゃんとしようという意識が高かったのかもしれませんが、結局自分もハチャメチャな(でも自分の心に嘘のない)行動をしたのでリチャードの根底にお父さんが根付いていたんだなと感じました。
普段言っていることと実際の行動にギャップがありすぎて笑ってしまいました。

最後の名シーンは笑いながら泣いていた

コンテストでオリーヴは自信がないながらも、おじいちゃんの言葉を支えに舞台に立ちます。
そこで、披露されたおじいちゃん直伝のダンスですが、何と7歳には不似合いなハレンチなダンスでした。
おじいちゃん何教えているの…と家族も大困惑して、審査員もオリーヴに舞台から降りるよう声を上げます。
しかし、オリーヴは気にせずダンスを続けます。
リチャードも何とかオリーヴにダンスを続けてほしいと思い、審査員を止めに行きますが、審査員は「娘さんを止めてください!!」と聞く耳を持ちません。
仕方なく、リチャードはオリーヴのほうに向かいますが…

何を思ったのかリチャードも音楽に合わせて踊りだします(笑)

それから、フランクが便乗してステージで踊り出し、その後ドウェーンも加勢します。
最後にはシェリルも加わり、結局家族みんなで踊ってしまいます。

ここ、本当に名シーンです。
自信たっぷりで踊るオリーヴの周りで、ぎこちなくてもオリーヴを守ろうとしてダンスする家族の姿に、思いがけない展開でとても面白くて笑っているのに、目からは涙が流れるのです。
人間って笑いながら感動の涙が流せるのかと不思議な感覚でした。

コンテストまでの道中でそれぞれ色々な苦難がありました。
でも、オリーヴという「光」を中心に家族で踊ることで、何だかみんな心が前に進んだような気持ちになります。

まさにオリーヴはフーヴァー家にとって「リトル・ミス・サンシャイン」だなぁと感じられるシーンです。

結局、会場側からはこってり怒られて今後のコンテスト出場は禁止になりましたが、それでもフーヴァー家の表情は清々しく気持ちのいいエンディングとなりました。

4.まとめ

普段は自分自身の劣等感でいっぱいの私ですが、「挑戦した時点で負け犬じゃないよ」「誇りなんだよ」というメッセージが込められた、面白くてあたたかいこの作品が大好きです。
このあたたかさ、多くの人に届いてほしいなと思います。