「テルマエ・ロマエ」感想|ドタバタお風呂コメディ映画!原作者ヤマザキマリさんを知ってから観てほしい

「テルマエ・ロマエ」感想|ドタバタお風呂コメディ映画!原作者ヤマザキマリさんを知ってから観てほしい

先日、以前より気になっていた本を読みました。
漫画家・ヤマザキマリさんのエッセイ「仕事にしばられない生き方」

「働く」ということを軸にヤマザキマリさんの波乱万丈の人生が書き記されています。
ヴィオラ奏者で変わり者の母親との日々、チリ紙交換の初めてのバイト、14歳のヨーロッパひとり旅、17歳からのイタリア留学、恋人の借金、妊娠・出産、帰国、漫画家デビュー、移住などなど…密度の濃い話ばかりで最後までのめり込むように読んでしまいました。

ただ個人的には、これらの壮絶な経験の中で垣間見える彼女の歴史や芸術への向き合い方がとても印象に残りました。
歴史上の人物を語る時にまるで友人であるかのように愛情を持って語っていたり、歴史上の出来事を自分たちの時代に置き換えるとどうだろうと考えたり、歴史や芸術を人生において欠かせない「軸」と捉えていました。
歴史を俯瞰して人間を汲み取り学び取る彼女の姿勢がとても魅力的であると同時に、いまの現代人には不足しているものなのかもしれないと感じました。

さて、前置きが長くなりましたが、そんな長年歴史と芸術に向き合ってきたヤマザキマリさんの漫画「テルマエ・ロマエ」を実写化した映画について紹介していきます。

今回はネタバレなしだけの内容で書いていこうと思います。


1.あらすじ
2.感想(ネタバレなし)
・顔が濃いだけの映画じゃない
・監督は「のだめカンタービレ」シリーズの演出家
・まさにヤマザキマリさんにしか生み出せないストーリー
3.まとめ


1.あらすじ

2012年公開
・監督:武内英樹
・出演:阿部寛、上戸彩、市村正親、北村一輝、宍戸開 他

時代はハドリアヌス帝時代の古代ローマ。
ルシウス・モデストゥスは非常に真面目な浴場設計技師である。
しかし、真面目が故にアイディアが古いと言われ、新しいもの好きのローマ人に受け入れられず仕事をなかなか取れないでいた。
そんな時、ローマの公衆浴場(テルマエ)で今後について考え事をしていたら排水溝に吸い込まれてしまい、気付いたら21世紀の日本にタイムスリップしてしまった。
ルシウスはその迷い込んだ世界が奴隷の暮らしている世界だと勘違いするものの、その種族(平たい顔族)の発達した文明に感動してしまう。
気付くとルシウスは古代ローマに戻っていて、21世紀の日本から学んだアイディアを基に市民に大人気の公衆浴場を次々と創り上げていく。

そんな評判を聞きつけられ、ルシウスは皇帝ハドリアヌスの専属浴場設計技師となり、仕事も絶好調となる。
以来、何度も21世紀の日本と古代ローマの間でタイムスリップを続けているうちに、日本で出会った山越真実も一緒に古代ローマに連れてきてしまう。
それがきっかけで、史実を変えてしまう可能性があると気付いた2人は何とかしようと奮闘する。

2.感想(ネタバレなし)

80点。
老若男女関係なくリラックスして楽しめるコメディです。

顔が濃いだけの映画じゃない

公開当初、ローマ人を演じるため日本人の中でもいわゆる「顔の濃い」俳優が起用されたことが大きくメディアで取り上げられていました。
むしろそこが大きく強調されていたような印象で、原作漫画は読んではいたものの、公開当時はあまり観る気が起きませんでした。
そういう話題性が全面に出されると観たくなくなるあまのじゃくなのです(笑)

しかし、長い年月を経て映画も観てみたところ、そういう評判は関係なく普通に楽しめました。
まずは、古代ローマの街並み、日本の昔ながらの建物、数々のお風呂など、撮影ロケーションがとても精巧でこだわりを感じました。
コメディ映画なのにこんなに豪華にしていいの?て感じです(笑)
古代ローマの風景は当時のローマ人の叡智を集結させた美しいものですから、それをCGではなく再現するところに熱意を感じられました。
(イタリアのチネチッタでのオープンセットで2週間かけて撮影されたようです。)

また、テーマやキャラクターは史実を織り交ぜたものであり、世界史の授業で聞いた名前の人々が「日本のアイディアを持ってきたらこんな風に喜ぶかもしれない、驚くかもしれない」と考えるとわくわくしました。
市村正親さん演じるハドリアヌス帝は、さすが普段から様々な舞台で演じられている方なので、古代ローマの衣装を着ても違和感がなかったです。
そして、何と言っても阿部寛さん演じるルシウスが日本の文明に驚く姿はいちいち面白くて、大真面目なルシウスをコメディタッチで描くそのギャップがこの映画の見所の1つと言ってもいいと思います。

実は、原作漫画とは異なったキャラクター設定もあります。
上戸彩さんが演じる漫画家志望の山越真実は原作では存在しないキャラクターですが、原作の小達さつきに準ずるヒロインのキャラクターです。
原作にないから必要なかったんじゃないかという声もありますが、おそらくヤマザキマリさんをモデルにしていて、そのエッセンスが映画にプラスされたと考えたら入れてもいいかなぁと思いました。

監督は「のだめカンタービレ」シリーズの演出家

「テルマエ・ロマエ」の監督である武内英樹さんは、2006年以降大人気ドラマシリーズとなった「のだめカンタービレ」の演出家でもあります。
放送当時爆発的な人気を誇り、私も大好きなドラマシリーズです。
「のだめカンタービレ」は、原作のコミカルな演出も取り入れつつ、クオリティーの高い音楽を使い、原作ファンをも魅了したと言われています。
そして「テルマエ・ロマエ」でも、効果的なクラシックの使い方、リアルとギャグの絶妙な融合の素晴らしさは存分に発揮されていると感じました。
上に書きましたルシウスが日本の文明に驚く姿は、こういった演出方法を取ったことによってより一層面白くしていると思いました。

まさにヤマザキマリさんにしか生み出せないストーリー

古代ローマ人はこんなにお風呂を愛していたのに、現代のヨーロッパにお風呂文化はほとんど残っていないのがとても不思議ですよね。
ヤマザキマリさんは日本のお風呂文化も愛しつつも、世界を飛び回って滅多にあったかいお風呂に入れない状況でした。
そしてある時、古代ローマおたくの夫と一緒にシリアに訪れて古代ローマの浴場の跡地を見たことが「テルマエ・ロマエ」の誕生に繋がったのです。
しかも、イタリアでは油絵を専攻しており彫刻のような男性は描き慣れているので、まさに彼女にしか生み出せないストーリーだったのだと感じます。

ルシウスは様々な危機に直面するのですが、そんな時に、いやそんな時だからこそ「まずはひとっ風呂」という発想が面白いところだなぁと思います。
それで実際に新しい道が開けることがあるから、お風呂ってすごいです。
昔は「ストレス」なんて概念がなかったかもしれないですが、本能的にストレス軽減の方法を知っていたのかもしれません。
疲れた闘いの合間にお風呂を欲するローマ人に対して、私たち日本人なら「分かる分かる」となると思います。
この映画は海外でも大きな話題となりましたが、お風呂を欲するローマ人の気持ちについて、海外の方より日本人のほうが共感できると考えるとちょっと誇らしかったりします(笑)

ただ、映画のストーリーで言うと、後半は映画オリジナルの展開で少しだれてしまった印象を持ってしまいます。
なので、ストーリーのどんでん返しのサプライズを期待するというよりは、ルシウスの古代ローマに対する忠誠心とお風呂に対する探究心を、優しい目で見守るという感じで臨んだほうが楽しめるかもしれません。

3.まとめ

私としては、「テルマエ・ロマエ」という作品を単体で経験するのではなく、是非ヤマザキマリさんという人間をベースにして味わってもらえたら、もっと作品を楽しんでもらえるのではないかと思っています。
この映画は大好評だったため、第2弾「テルマエ・ロマエⅡ」も制作されています。
そちらも是非堪能していただいて、鑑賞後はゆっくりお風呂に浸かってほっとしましょう。