「ツレがうつになりまして。」感想|コミックエッセイ原作 健やかなるときも、病めるときも、を考えたくなる夫婦の物語

「ツレがうつになりまして。」感想|コミックエッセイ原作 健やかなるときも、病めるときも、を考えたくなる夫婦の物語

ある日、自分が、もしくはパートナーが急に「うつ病」になったら?
おそらく、うつ病は自分の目の前に現れるまで深く考える人は多くないかと思います。
しかし、うつ病は誰でもかかる可能性のある病気と言われています。
「ツレがうつになりまして。」を観て、もう少し自分事として考えられたら、自分も周りの人たちのことももっと大事に想える人が増えるかもしれないと思い、今回紹介させていただきます。
私はこの映画をずっと前に鑑賞したのですが、そのときから何だか心のどこかでずっと残っている大切な作品です。


1.あらすじ
2.感想(ネタバレなし)
・原作はコミックエッセイ
・あくまでのケースの1つとして観てほしい
3.感想(ネタバレあり)
・原作と違うシーン
・頑張る人への大切なメッセージがたくさん込められている
・経験は大きな財産
4.まとめ


1.あらすじ

2011年公開
・監督:佐々部清
・出演:宮﨑あおい、堺雅人 他

ハルさんとツレは結婚5年目の夫婦。
ハルさんはのんびりと漫画を描いている一方、ツレはバリバリと働く真面目で几帳面なスーパーサラリーマン。
そんなツレがある朝、「お弁当が作れない」、「死にたい」と言い出した。
心配したハルさんの勧めでツレが診察を受けると、ストレスと激務による「心因性うつ病」と診断された。
薬を服用しつつ回復を目指すが、次第に会社で働くことが難しくなり退職することを夫婦で決めた。
その後、調子が良くなったり悪くなったりを繰り返すツレとハルさんとの日々を描いた夫婦の物語。

2.感想(ネタバレなし)

88点。宮﨑あおいが演じるハルさんが可愛いし、堺雅人が演じるツレのコミカルな落ち込み方は、うつ病というテーマに反してライトに描かれていて、バランスが良かったです。

原作はコミックエッセイ

この映画は、細川貂々さんによるコミックエッセイ「ツレがうつになりまして。」(2006年)「イグアナの嫁」(2006年)「その後のツレがうつになりまして。」(2007年)を基に製作されました。
私も原作を読みましたが、パートナーが急にうつ病になってしまった驚き、うつ病になってしまった本人の戸惑い、回復に向けて二人で協力していく過程がコミカルに描かれていて、非常に読みやすいです。
映画の中でも実際の細川貂々さんのイラストが用いられているため、元の世界観を大切にして丁寧に映像におこしている印象でした。
うつ病というテーマで重くなりがちなところを、宮﨑あおい、堺雅人という最強タッグで微笑ましい夫婦を見事に演じていました。
なおかつ、泣けるシーンも多くて明るいだけの映画ではないところも素敵です。
言うまでもなくベテランのお二人ですが、出演していると作品に深みが出るので二人とも好きなんですよねぇ…。

あくまでもケースの1つとして観てほしい

数あるレビューの中では、コミカルに描かれているからか「うつ病の大変さが伝わらない」「うつ病が軽く思われる」等の意見もちらほら見かけます。
しかし、個人的には、まだうつ病について考えたことがなかった人たちの「はじめの一歩」としては最適な作品だと感じています。
正直、どんな人でもかかる可能性のある一般的な病気になってきているのに、未だにうつ病に対して誤解を持っていて根性論を持ち込む人たちも居ます。
また、そんな人たちは偏見を持っているという意識がない人も多く、うつ病について知る機会を逃しているのではないかと思います。
しかし、この映画を観ることで「うつ病になるとこんな症状が出る人もいる」という、あくまでもケースの1つとして見てもらい、うつ病について関心を持ってもらえたら嬉しいです。
映画を通して考えたことは、もしかしたら前もって自分を守ることができるかもしれないし、パートナーや身近な人を守ることができるかもしれません。
それだけ「知る」ことはとても重要なことだと感じました。

個人的には、前半のツレがうつ病と診断されるまでの過程が妙にリアルで、自分でも見逃してしまうんじゃないかと怖くなりました。
日々の生活の中で「体調悪そうだな」「仕事で疲れてるから少し休めば大丈夫かな」ということはたくさんあるけれど、こういう小さなサインを見逃し続けて発症するかもしれないということは頭の片隅には入れておきたいと思いました。

3.感想(ネタバレあり)

原作と違うシーン

映画は原作コミックの内容を上手にまとめていますが、事実とは異なった場面も作っています。
それは、お風呂場での自殺未遂のシーン。
仕事の締め切りに追いつめられてイライラしていたハルさんが、口うるさいツレに対してつい怒りをぶつけてしまいます。
ツレはそれに対してひどくショックを受け、「自分はここに居てはだめなんだ」とお風呂場で自殺を図ります。
映画では間一髪で様子を見に来たハルさんが自殺を食い止め、「ツレはここに居ていいんだよ」「ツレごめんね」と何度謝ります。
ここのシーンの演技が素晴らしく、私は涙が止まりませんでした。

しかし、実際には細川貂々さんは自殺未遂の場に立ち会えなかったようです。
本を執筆するためにツレの日記を読んだときに初めて、ツレが自殺しようとしていたことを知って、とても後悔したようです。
そのため、映画で細川貂々さんが成すことができなかったことが実現されて、本人も喜んでいたそうです。

実際には、ツレが自殺する前に自分自身で思い直して事なきを得ましたが、一瞬の感情で一生後悔したかもしれません。
当時の細川貂々さんの気持ちを考えたら胸が苦しくなりますね。

頑張る人への大切なメッセージがたくさん込められている

この映画では、ツレとハルさんが一緒に大切なことをたくさん学んでいきます。

・頑張らなくていい
・休みは休むことが宿題
・割れないでいることが大事
・「あ」焦らない・焦らせない
 「と」特別扱いしない
 「で」できることとできないことを見分ける
・病気になることは恥ずかしくない

これらはごくごく一部ですが、今まで色々なプレッシャーに囲まれてきたツレが、それを取り払い自分と向き合い、頑張らないことを覚えていきます。
でも、これらは特にうつ病の人だけではなく、日々自分を擦り減らしながら頑張っている人たちにも是非伝えたいなと思いました。
私の周りを見ても、休むことができずもう少しで限界が来るんじゃないかという人も多いです。
そんな人たちには、健康が一番と知って、割れる前に何が何でも引き返してほしいと感じました。
本当に現代社会には異常なことがたくさん起きていますからね…。

経験は大きな財産

近年、様々なことを題材にしたコミックエッセイが出版されベストセラーとなっています。
正直、中には他の漫画家やイラストレーター等に比べて画力が足りないと感じるコミックもあります。
しかし、その一方でその著者独自の「経験」は何にも代えがたい財産であり、それを伝えることで救われる人たちが居るのも事実です。
人間は一人の人生しか送ることができません。
コミックエッセイやそれを題材にした映画で他の人の「経験」を疑似体験することによって、たくさんのことを知ることができれば、周りの人に対してもっと優しくなれるのかなと感じます。

まとめ

この映画では、何よりハルさんとツレがお互いに思いやる描写は心あたたまります。
教会での報告会でハルさんが言っていた「健やかなるときも、病めるときも、一緒に寄り添うことで本当の夫婦になっていった」という言葉はぐっと来ます。
私もそんな夫婦関係を築けるよう、毎日を大切に過ごしたいと思いました。
うつ病のことを知りたい人だけでなく、夫婦についてじっくり考えたい人にも是非観てもらいたいです。