第二次世界大戦を題材にした映画4本|「永遠の0」「日本のいちばん長い日」「ヒトラーの忘れもの」「プライベート・ライアン」

第二次世界大戦を題材にした映画4本|「永遠の0」「日本のいちばん長い日」「ヒトラーの忘れもの」「プライベート・ライアン」

1945年8月15日、昭和天皇の玉音放送によりポツダム宣言の受託と軍の降伏の決定が伝えられ、日本における第二次世界大戦は終戦を迎えました。

私たちは変わらず戦争について、平和についてちゃんと考えられているだろうか。
恥ずかしながら、私は大人になってからそんなことを考えられるようになり、その第一歩として戦争映画を少しずつ観るようになりました。
少しずつでもいいから戦争下で何が起こったのかを知り、そこから気になることは書籍を読んだり、新聞記事を読んだり…
特に8月はそんな日々を過ごすようになりました。

昨年はこのブログでは、クリント・イーストウッド監督の「父親たちの星条旗」「硫黄島からの手紙」を取り上げました。
その時のレビューは以下からどうぞ。
「父親たちの星条旗」レビュー:こちら
「硫黄島からの手紙」レビュー:こちら

今年は様々な立場から戦争を考えてみたいと思い、邦画から2本、洋画から2本を選んで鑑賞しました。
本当は8月15日までに投稿したいと思っていましたが、やはり戦争映画は私にはとても重くのしかかり、投稿するまでに時間がかかってしまいました。
詳しいあらすじは書かず、私の感想を述べていこうと思います。


1.邦画
・永遠の0
・日本のいちばん長い日
2.洋画
・ヒトラーの忘れもの
・プライベート・ライアン
3.まとめ


1.邦画

「永遠の0」|いずれ叶わなくなる当事者からの「語り」を意識

・2013年公開
・監督:山崎貴
・出演:岡田准一、三浦春馬、井上真央 他

【コメント】
百田尚樹さん原作の小説「永遠の0」を映画化。

戦争映画というと、当時の兵士たちの視点から悲惨な戦況を描くというものが多いですが、
この作品では、主人公の祖父である宮部久蔵を知る当事者たちからの「語り」に合わせて、当時の回想シーンが描かれるという手法を使っています。
個人的には、橋爪功さんが演じた井崎の「語り」がとても印象的で、つい最近経験したかのような繊細な語り口で、それだけ忘れられない体験だったことがひしひしと伝わります。
三浦春馬さんが演じた佐伯健太郎と同様、井崎の「語り」に聞き入ってしまいました。
佐伯健太郎は当事者の「語り」を聞きまわるうちに、自ら戦争について調べるようになりますが、それだけ当事者からの「語り」は強烈で力のあるものなんだと感じました。

戦後75年が経ち、このように戦争経験者から戦争未経験者へ直接戦争について語ることは、いずれ不可能になってしまいます。
当事者の「語り」がどれだけ貴重か、他の戦争映画では得られない視点をここでは意識することができました。
現代から過去の出来事を紐解いていくように描かれているので、これまで戦争についてじっくり考えたことのない人たちにとっては非常に見やすい構成となっています。
戦争について関心を持つための「入口」としては適している作品のように感じます。

全編通して描かれていたのが、巧みな操縦技術を持つパイロット宮部久蔵の「死にたくない」「生きて帰る」という信念。
部下には「どんなに苦しいことがあっても、生き延びる努力をしろ」と強く伝えていました。
その上での冷静な戦況判断、無駄死にを避けるための慎重さは、本来では重要なことであるはずなのに周りからは「帝国海軍位置の臆病者」と罵られたり、「士気が下がる」と怒鳴られたりしました。
厳しい戦況下で追いつめられると、人間はだんだん根本的なことを見失いやすくなるのだなぁと実感します。
より少ない死傷者で戦争に勝つことより、国のために戦争で命を捧げることのほうが尊いという意識がメジャーである中、宮部の信念を貫くことは本当に難しかったと思います。

だからこそ、宮部の冒頭の意思の強いまなざし、部下への熱い叱責、妻・故を愛する姿、そして徐々に心が折れていく姿、特攻に志願したときの表情…
岡田准一さんはいろんな宮部久蔵の演じ分けをされていて、とても良いキャスティングだと感じました。

少し戦争とは話が脱線してしまうのですが、宮部久蔵の感覚は現代でいうとスタンダードと感じる人が多いと思います。
たった数十年で「当たり前」が変わってしまうのだから、現在自分が「当たり前」だと思い込んでいるものもあっという間に時代遅れでナンセンスになるのかなぁとふと思ったり…。
現代のスタンダードが正解だとは思い込まずに、常に柔軟な思考を持ちたいものです。

「日本のいちばん長い日」|天皇制について考えるきっかけ

・2015年公開
・監督:原田眞人
・出演:役所広司、本木雅弘、山崎努、堤真一、松坂桃李 他

【コメント】
半藤一利さん原作の小説「日本のいちばん長い日 決定版」を映画化。
加えて「聖断 昭和天皇と鈴木貫太郎」(半藤一利著)、「一死、大罪に謝す 陸軍大臣阿南惟幾」(角田房子著)も参考文献にしているようです。
(ちなみに、1967年にも同名の作品が岡本喜八監督のもと映画化されています。)

この作品も戦場を描いたものではなく、鈴木貫太郎が首相に就任した1945年4月から玉音放送で終戦が国民に告げられた1945年8月15日までの
昭和天皇、鈴木貫太郎内閣の官僚たちを中心に描かれています。
ポツダム宣言発表、御前会議、広島・長崎への原爆投下、宮城事件などが起こる中で、昭和天皇、鈴木内閣はどのような判断をしていくのか。
戦争の方向性は昭和天皇と内閣の官僚たちで決めていくはずに、それぞれの立場があってなかなか政府としての決断ができません。
その間に原爆が投下される等もどかしい時間も多いです。
なかなか戦争を終わらすことができない根強い「何か」を作品を通してずっと描いています。

俳優陣がとくにかく素晴らしかったです。
阿南陸軍大臣を演じた役所広司さんも、昭和天皇を演じた本木雅弘さんも、鈴木内閣総理大臣を演じた山崎努さんも、
それぞれの葛藤が感じ取れる重厚な演技でした。
そして、徐々に演技の幅を広げてきた松坂桃李さん、この作品でもアクセントとなる畑中陸軍少佐を見事に演じていました。
彼らの演技を見ただけで、何だか上質な映画を観た気分になります(笑)
静かな前半とタイトル通りとてつもなく長く感じられる濃厚な1日を描いた後半、その差が後半をより引き立たせています。

ただ、作品の中では観客に対してあまり親切に「いまどんな状況なのか」を説明することはありません。
あくまでも歴史的事実が次々と発生していって、観客はそれをセリフから感じ取る…そんなイメージです。
そのため、もしかしたらこの時期の史実・人物・知識等が不足していると、少しストーリーから置いて行かれる可能性はあります。
私もそこまで詳しくなかったので、映画を鑑賞後掴み切れなかった箇所を調べて、疑問を消していくという作業を必要としました。

個人的には、天皇がここまではっきりと描かれた映画を観ることは初めてで、
今までぼんやりとしかイメージを持っていなかった「天皇」という存在について考えるきっかけとなりました。
学校で大まかには習って知識としてはあるけれど、その先の自論はないなぁと思い天皇制や憲法についての書籍を読んでいます。
(関係ないけど、こういう分野は右・左バランスよく読みたいのに、知識がないときに書籍を選ぶのは一苦労ですね)

2.洋画

「ヒトラーの忘れもの」|カテゴライズせずに個人を見ると違った景色がある

・2015年公開(デンマーク・ドイツ)
・監督:マーチン・サントフリート
・出演:ローランド・ムラ、ミケル・ボー・フルスゴー、ルイス・ホフマン 他

【コメント】
普段目を向けられない視点の戦争映画が観たいと思って選びました。

1945年5月、ナチス・ドイツによる5年間の占領から解放されたデンマークが舞台となっています。
ドイツ軍が海岸線に埋めた地雷を除去するために駆り出されたのが、捕虜となったドイツ兵であり、彼らは地雷をほとんど扱ったことのない少年たちでした。
1929年の俘虜の待遇に関するジュネーブ条約が適用された場合、少年たちへの地雷除去の強制は禁じられますが、
デンマークはドイツの保護国であり交戦国ではないことから、この条約の適用外と考えられていたようです。

ドイツ兵ということから、少年たちはひどい扱いを受けます。
少年たちを監督するデンマーク軍のラスムスン軍曹は、毎日のように暴力と罵声を浴びさせ、食事も十分に与えず、体調不良でも休憩を取らせず、
ただひたすらに少年たちに地雷の除去を進めさせました。

しかし、ラスムスン軍曹が少年たちと次第に会話を交わすようになり、ドイツ兵ではなく「個人」として認識したとき、徐々に彼らの関係性が変わっていきます。
ラスムスン軍曹の心情の変化のグラデーションは素晴らしかったし、ローラン・ムラの演技も非常に引き込まれました。
後半で関係性が揺れ戻るような出来事もありますが、それでも確実にラスムスン軍曹の中で無事に少年たちを故郷に帰したいという想いは大きくなるのが感じ取れます。

私は戦争映画を観る度に、「カテゴライズしないで個人を見る」ことの大切さを噛み締めます。
「こいつは〇〇人だから殺してもいい」「〇〇は私たち国民を苦しめたからどんな扱いをしてもいい」というのは短絡的で、個人同士で関われば違った景色が見えることが多いと思います。
逆に、自分と同じカテゴリーに所属している(と思っている)人たち全員が自分にとって「善人」であることはないということも頭に入れておきたいですね。

一見リゾート地のような美しいビーチと常に死と隣り合わせの少年たちの表情の対比がとても印象的で、
少年たちが息を飲み慎重に地雷を除去している姿を見ていると、いつ爆発するんじゃないかとこちらも常にハラハラ。
ハリウッド映画のように知っている俳優さんが演じている訳ではないので、スクリーンの映る少年たちはどこかリアルさを感じてしまいます。

第二次世界大戦を題材にした映画というと、日本、ドイツ、アメリカ、イギリスがテーマの映画が多いですが、
少し違う国に目を向けたら新しい史実が見えてきて非常に興味深いのでおすすめです。

「プライベート・ライアン」|戦争映画に革命を起こした大切な作品

・1998年公開
・監督:スティーヴン・スピルバーグ
・出演:トム・ハンクス、エドワード・バーンズ、マット・デイモン 他

【コメント】
戦争映画のど真ん中の傑作。2時間50分の大作。
ずっと観なくてはならないと感じつつ、勇気が出ずなかなか鑑賞できていなかった1本です。
スティーヴン・スピルバーグ監督は「インディ・ジョーンズ」「ジュラシック・パーク」など大衆が楽しめる作品も多く製作していますが、そのイメージでこの作品に挑んではダメです。
戦争の凄惨さを描くことにおいて一切妥協せず、観客に次々と恐怖を畳みかけるシーンが多いです。

特に、その後の戦争映画の撮影方法に影響を与えたと言われる冒頭20分間のノルマンディー上陸作戦のオハマビーチの戦闘はやはり圧巻。
上陸前の兵士それぞれの表情、上陸した途端に一気に射殺されていく兵士、水中に潜るも同様に射殺されたり荷物の重さで意識を失っていく兵士、
右を向けばどこかで地雷の爆発音がして兵士の手足が吹っ飛び、左を向けば遺体の山、進めば銃弾の嵐…もうめちゃくちゃです。あっという間に命が消えていきます。
まるで自分が戦場に居るかのような錯覚に陥るカメラワークで「あぁ、こんなところに居たくない。怖い。早くここから逃げ出したい。」と強く願ってしまいます。
「すごいものを観てしまった」という感覚はあるものの、「もう一度観たい」とはならないのです。
この冒頭を見るだけでも「あなたは自分をこんな状況に身を置けますか?」と容赦なく問いかけられているような気がして、当事者意識を生むシーンだと感じました。

あらすじとしては、この凄惨なノルマンディー上陸作戦を生き延びたミラー大尉(トム・ハンクス)が、4人兄弟のうち3人が戦死してしまったライアン兄弟の最後の生き残りのジェームズ・ライアン(マット・デイモン)を本国に連れ帰るべく部下数名を連れて救出作戦を決行するというお話です。

この作品では、戦争下における理不尽な命令(1人の兵士を連れ戻すために数名の兵士を危険に晒す)への葛藤を描いており、兵士と言えども戦争の前線に赴いているのはそれぞれ普通の生活を過ごしていた1人の人間ということを思い出させてくれます。

主人公のミラー大尉は戦争前は高校教師という立場だったのにも関わらず、戦争下では敵国の兵士を容赦なく倒すことを続けてきました。
そんなストレスから時折手の震えが出ている程でした。
「ジェームズ・ライアンを連れて帰る」ことは最初は兵士の命を平等に扱っていない理不尽な命令に思っていましたが、
それまで敵国の兵士に対して行ってきた行為を考えるとは唯一「故郷に帰ったときに妻に誇れる任務」なのではないかと考えるようになります。
トム・ハンクス…私はどの作品を観ても彼の演技のファンになってしまうのですが、今回も例外ではありませんでした。
ラストで拳銃を抜き、向かってくる戦車をひたすら銃撃するシーンは、ミラー大尉の表情が何とも絶妙で目が離せませんでした。

また、通訳としてミラー大尉の分隊に引き抜かれたアパムも印象的でしたね。
彼はそれまで地図作成や情報処理を担当していたため戦闘経験がほとんどありませんでした。
最後の闘いでは恐怖から戦場で仲間の予備弾を補給するために動くことができず、仲間たちを見殺しにしてしまいます。
この仲間たちが殺されるシーンも容赦なく、時間をたっぷり使って描いています。
そのため、アパムに対して苛立ちを覚える観客も居る一方、
アパムの気持ちと同様「あぁ、今なら助けられるかも。でも殺されるかも。怖い。行きたくない。どうしよう。」という感情を抱く観客も多く居るのではないでしょうか。
勇敢に闘う兵士ばかり描くヒロイズムではなく、恐怖で動けない兵士も描くことで戦場のリアリズムを描いているように感じました。

この作品では「ヒトラーの忘れもの」とは異なり、ドイツ兵との意思疎通はほとんど出来ませんでした。
お互い出会ってしまったときに、言葉が通じず争う意思の有無が分からぬまま、相手に命が奪われる前に攻撃していました。
誤解したまま命を落とす兵士も多く居たのだろうと想像すると胸が痛いです。

そして、時折シーンを後押しするような音楽がすごく良いのです。
調べてみると、これを手掛けているのがジョン・ウィリアムズ…なるほど、納得。
「スター・ウォーズ」や「E.T.」「インディ・ジョーンズ」「ジュラシック・パーク」「ハリー・ポッター」など有名作品を挙げたらキリがない巨匠です。
ハンス・ジマーも大好きだけど、ジョン・ウィリアムズも凄すぎる。やはり映画における音楽の力は偉大です。

2時間50分に及ぶ超大作で間違いなく傑作なのですが、ショッキングなシーンが多いので戦争映画に慣れていない人は精神状態が安定しているときに観ることをおすすめします。

3.まとめ

さて、今年は4本の映画を通して第二次世界大戦を振り返ってみました。
気になった作品はあったでしょうか。

戦争は知れば知る程根が深いし、考えれば考えるほど気持ちが沈んでしまいますが、だからと言って決して知らなくていいことではありません。
映画鑑賞という趣味の延長線上で、こうやって歴史を学ぶことができるのだから、本当にありがたいです。
今後も自分のペースで続けていきたいと思っています。
長くなってしまいましたが、最後まで読んでいただいた方本当にありがとうございました!